設備系の資格である電気工事士は就職に有利と言われています。
その理由と、難易度はどれくらいなのか、受験資格はどうなっているのかなどを交えて解説しました。
電気工事士とは
そもそも電気工事士とはどんな資格なのか、簡単に確認しておきましょう。
どんな資格?
法令で屋内外の電気工事や管理をすることを認められている技術者に付与される国家資格です。
電気工事は、電気工事士法によって免状の交付を受けている電気工事士しかできないため、独占資格と言われています。
第一種と第二種の2種類がある
電気工事士は第一種と第二種に分かれています。
第二種電気工事士は、一般家屋、小規模商店、600V以下で受電する電気設備等の一般用電気工作物の工事をすることができます。
第一種電気工事士は、第一種電気工事士の範囲に加えて、ビル、中小工場、高圧受電の商店等の500kW未満の自家用電気工作物も公示することができます。
電気工事士の就職先
電力会社、ビル管理会社、建設会社、工務店、電気工事会社などが就職先になります。
電気工事士は就職に有利である理由
電気工事士が就職に有利である理由を以下にまとめました。
人手不足
少子高齢化な上に、不人気の業界なので、慢性的な人手不足に陥っています。
このままだと、年齢による大量退職で、技能が伝承できないという問題が発生し、さらなる人手不足が予見されています。
実際に、転職サイトや、ハローワークを見ると分かりますが、常に電気工事士の求人があります。
「応募があるだけでもありがたい」と言われるほどなので、資格がなくても、就職の機会は多いです。
資格があるだけで選考の機会が増える
工事士.comの2017年の調査によると、電気工事の実務未経験者で、無資格でも応募できる求人が68%あると公表しています。
残りの32%は、実務経験がなくても資格があれば応募できる求人です。
つまり、第二種電気工事士の資格を持っていれば、それだけで選考の機会が多くなり、意欲があると評価され、就職できる可能性がより高くなります。
電気工事士の取得難易度
以下の合格基準、合格率を見ても分かるように、電気工事士の取得難易度は低いです。
合格基準
第一種・第二種ともに、筆記試験の基準点は60点を目安に年度によって多少前後します。
技能試験の基準点も、何れも欠陥がないこととされています。
第一種電気工事士の合格率
平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和1年 | 令和2年 | |
---|---|---|---|---|---|
筆記試験 | 43.6% | 40.7% | 34.5% | 46.2% | 45% |
技能試験 | 58.9% | 59.9% | 58.8% | 61% | 60.8% |
※電気技術者試験センターの試験実施状況の推移をもとに作成
第二種電気工事士の合格率
平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和1年 | 令和2年 | |
---|---|---|---|---|---|
筆記試験 | 51.6% | 52.2% | 48.4% | 57.9% | 53.4% |
技能試験 | 69.3% | 64.6% | 62.8% | 61% | 68.3% |
※電気技術者試験センターの試験実施状況の推移をもとに作成
電気工事士の年収は?
電気工事士を取得すると、就職に有利であることが分かりましたが、年収はどれくらい稼げるのでしょうか?
平均年収は400万円代後半
2019年の賃金構造基本統計調査によると、電気工事士の平均年収は、約473万円となっています。
平均年収:4,726,400円(※)
平均年齢:40.8歳
平均勤続年数:13.2年
平均超過労働時間数:23時間
平均月額給与:326,100円
平均年間賞与:811,400円
※326,100×12+811,400=4,726,400円
未経験のうちは低い
電気工事士は、見習いと呼ばれる未経験者、一人前の一般社員、責任者の役職者というように、徒弟制度のような形になっています。
そのため、資格の有無に関わらず、実務未経験だと、年収は250~350万円の間になります。
一般社員クラスになると、300~500万円、役職者だと400~600万円、さらに独立すれば、800万円・1000万円を得る人もいます。
第一種電気工事士の方が年収が高くなる
第一種電気工事士は誰でも試験を受けることができますが、大卒・高専は3年以上、その他は5年以上の実務経験がないと、免状を発行してもらえません。
そのため、上位資格であることと、実務経験によって年収が高くなります。
企業規模・工事の種類など条件によって異なる
当然、企業規模が大きい方が、各種手当などが整っているので、年収が高くなります。
2019年の賃金構造基本統計調査では、1,000人以上の事業所の平均年収が約491万円で、全体の平均よりも約18万円高いです。
また、工事の種類によっても異なります。
個人宅よりも大規模な工場・施設の工事の方が難易度が高くなるので、収入が高くなります。
電気工事士になるメリット・デメリット
電気工事士への興味が深まったと思います。
そこで、電気工事士になるメリット・デメリットについて確認しておきましょう。
デメリット
- 体力が必要
- 危険なこともある
- 体育会系
- 休日出勤もある
- 学歴が低いと給与面で不利
電気工事は、建設業の中で比較すると、体力的にきつい業種ではありませんが、未経験者からすると、きつく感じるので、体力は必要です。
さらに、電気に関わるので、感電や転落の危険性がある仕事でもあります。
実際に、電気工事中に消防設備が誤作動を起こして、人が亡くなるという事件も起きています。
そのため、上司も厳しく指導することがありますが、それが体育会系に感じる人が多いです。
また、勤務先によっては、休日出勤もあります。
工事のスケジュールに間に合わせたり、個人宅だと立ち会ってもらう必要があるからです。
給与面では、低学歴だと不利になります。中卒と大卒とでは大卒の方が高いです。
メリット
- 独占業務なので好不況の波が少ない
- 仕事の幅が広がる
- 関連資格の取得で年収アップできる
- 転職・独立を目指すこともできる
電気工事士に限らず設備管理系の資格は独占業務なので、好不況の波が少ないです。
第二種よりも第一種の方が規模の大きい施設の電気工事もできますし、消防設備士や危険物取扱者などの他の設備系資格を併せて取得しておくと、仕事の幅が広がり、年収アップにもつながります。
キャリアの方向性としては、転職や独立も目指せます。
実務経験を積めば、より良い条件の他社に転職することもできますし、人脈が得られれば、独立も目指せます。
電気工事士試験の受験資格とおすすめ書籍
電気工事士試験の受験資格とおすすめ書籍についてまとめました。
電気工事士試験の受験資格
電気工事士試験の受験資格ですが、第一種・第二種ともに誰でも受験することができます。
ただし、第一種の免状の発行に関しては、技能試験に合格した上で、3年以上の実務経験を求められます。
なお、合格前の実務経験が認められるのは、以下の条件に当てはまらないもので、3年以上従事場合に限ります。
実務経験の対象にならない工事
1. 電気工事士法の定義で電気工事から除かれている「軽微な工事」
2. 電気工事士法で別の資格が必要とされている「特殊電気工事」(最大電力500kW未満の需要設備のネオン工事及び非常用予備発電装置工事)
3. 5万V以上で使用する架空電線路の工事
4. 保安通信設備の工事
出典:「第―種電気工事士試験合格者が免状を取得するのに必要な実務経験」
電気工事士試験対策におすすめの書籍
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